2018年04月08日付

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日本人は桜が好きなのだなと、春を迎える度に思わされる。普段は人影まばらな公園もにぎわい、名所とされる場所には県外ナンバーの車が集まる。記録的な早咲きを受け、急ぎの花見の誘いも舞い込んだ▼“天下第一の桜”で知られる伊那市の高遠城址公園も平年より12日早い、過去最速での満開となった。「門外不出」とされるタカトオコヒガンザクラは、ソメイヨシノなどと比べ赤みが強いのが特徴。近くにある高遠ダムでも放流ゲートなどを濃い桜色にライトアップする取り組みが始まった▼以前、タカトオコヒガンザクラを使った桜染めのハンカチやストールといった布製品を取材させてもらった。伊那市のはた織り保存会が開発したもので、花びらではなく、樹皮を煮出して素朴ながらも、淡く美しい桜色に染め上げた▼その際に思い出したのが、詩人で評論家の大岡信さんの「言葉の力」。京都の染色家に見せてもらった樹皮から色を出した見事な桜色の着物から、樹皮や木全体にこそ桜色が秘められていることに気付かされ、「言葉の一語一語は花びらの一枚一枚といっていい」と指摘。言葉を表面だけで捉えるのではなく、真の意味の理解に努める大切さを説いている▼中学生の頃だったか、教科書に載っていた作品だ。取材を機に改めて読み返した。仕事で言葉を扱っていることもあり、以来、きれいな桜に出会うと蘇る教訓となっている。

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