2018年04月10日付

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上り坂の小道を歩いていくと、薄いピンク色に染まった山に目を奪われた。振り返って見れば、諏訪湖を望む眺望が広がる。週末に訪ねた高台の桜の名所は、すっかり見頃になっていた。下諏訪町にある水月公園である▼1902年に発足した地元の俳句愛好会「水月会」が当時、桜を植えたのが始まりだ。その後、戦時中に伐採の憂き目にも遭ったが、復興に着手。今では管理が町に移り、ソメイヨシノなど約560本の桜が植わる。園内のあちこちに建つ句碑や歌碑が趣を添える▼公園の桜の美しさはいつも通りだったけれど、例年と変わったこともあった。園内唯一の花見茶屋「江戸家」が若い世代に引き継がれた。昨季まで51年間店を守った田中里美さん(80)が高齢で閉店を覚悟していたところ、町内の川田和成さん(66)が後継に名乗り出た▼川田さんが経営するライブハウスの店長富永忠明さん(42)を中心に、カレー食堂や建設業などの若い仲間と茶屋を切り盛りしている。団子や鳥の空揚げ、おでんなど手作りの味がセールスポイント。来季以降は「音楽ライブなど新たな試みにも挑戦して、桜の名所を守り、盛り上げていきたい」という▼考えてみれば、桜の木にしても、茶屋にしても、人から人へと引き継がれた財産によって、花見名所の今がある。そんな人の思いや歴史に思いをはせつつ眺める桜は、また一層美しさを増して見える。

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