2018年6月17日付

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雨が大地を潤し、緑に精気が満ちてきた。命の輝きは活力をくれるが農家にとっては本格的な戦いの始まりだ。相手は草。熱射の下、日ごと伸びる草々との勢力争いは過酷▼その草どもに挑まんと根元をかき分けると、わずか10センチ四方にも豊かな生態系の世界が広がる。がっしり深く根を張る種や、周りの草木にからまり依存しながらちゃっかり頭一つ抜きん出る種など独自の生き残り戦略はまるで人間社会をみるようで、思考が哲学的に広がる▼日々自然と向き合う農家の人たちはこうして1本の草からも多くを学んでいるのだろう。辰野町で農業を営む根橋正美さんがかつて「お百姓とは百の仕事と百の知識を持つ人という意味」と語っていたのを思い出す▼農業も近頃は代替わりして、都会の若者らが担い手となり活躍している。意欲あふれる彼らだが地域に対しては少し不満があるそうだ。「資材の片づけが悪いとか、道路に泥を落とすなと怒られる。よそ者にも温かい目を向けて」。不慣れな土地での苦労は理解するが、地元民の見解はやや違う▼畑に置きっぱなしの資材が風で飛んだら周囲に迷惑がかかる。皆が使う道路を汚してはいけない―。地域の人たちはこう細やかに気を使い合って農地を守り、美しい集落風景を作ってきた。地域を次世代へつなぐ時、知識や技術だけでなく、お百姓さんら住民の心をいかに引き継ぐか。これも大切だ。

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