2016年05月09日付

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数年前、新規の企画をある法人にお願いしようとした時のことである。相手先の若い担当者がこう言った。「お互い忙しいから、すべてメールでやりとりしましょう」。善意で言ってくれたのだが、少し面食らった。まず面会の約束を取り付け、しっかり趣旨を説明して…、と緊張気味に考えていたからだ▼確かに仕事上でも、電子メールは便利だなと思う。相手の時間を邪魔しない。文書や写真もそのまま送ることができる。記録として残るから、「言った、言わない」もない。現代のビジネスはメールなしには成り立たないかもしれない▼建築家の安藤忠雄さんの事務所では、スタッフが外部と連絡を取る場合、海外を除いてメールやファクスが禁止だそうだ。当然、若いスタッフからは疑問の声もあるという。彼らの主張にも一理あるとしつつ、安藤さんは自分のやり方を貫く▼その理由はこうだ。「技術が進歩しても、仕事は人と人との生身の対話で進められるべきもの。(略)ローテク主義、生の対話、直接のやりとりを重んじている」(「仕事をつくる」日本経済新聞出版社)▼いずれ会社に行かずとも、多くの人が自宅で仕事をする時代がくるかも知れない。しかし、人と人とが直接向き合うことで、互いに受ける印象や、無駄と思える会話の中から何かが始まることもあるだろう。安藤さんの言う「ローテク」の部分にも意味があると思いたい。

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