2018年06月28日付

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1年間だけだが、松本で仕事をしたことがある。2002年のこと。年間を通して大きな催しがある街だが、この年の松本の最大プロジェクトはサッカーワールドカップ日韓大会に向けて誘致したキャンプだった▼産声を上げたアルウィンに南米パラグアイの代表が集まった。チームの顔は、得点も奪うゴールキーパーのチラベルト選手。主将でもあった彼は、市民と積極的に交流し、児童と一緒に給食も食べた。アルウィンを気に入り「素晴らしいスタジアム」と称賛した▼ピッチではいま松本山雅の選手が躍動し、スタンドでは緑が波打つ。アルウィンやキャンプを機に、サッカー不毛の地とも揶揄された信州に文化が根付き、発展した。日韓大会から10年後、山雅はJリーグの舞台へ。関係者の努力と地域の思いが結実してJ1昇格も成し遂げた▼松本など3市町にまたがる美ケ原高原で今月、上伊那農業高校(南箕輪村)の生徒たちがアツモリソウの人工授粉作業をした。サッカーの話とは反対に、こちらは近年の鹿の食害もあって多くの個体群が消滅。保護回復に向け、無菌培養技術による発芽を当面の目標に掲げる▼発芽率は10万分の1とされ開花までも歳月を要する。地道な作業を積み重ね、後輩にパスをつないだ先に見えてくるゴールだ。千里の道も一歩から。地域紙としても彼らの挑戦を粘り強く追い、夢がかなった瞬間に立ち会いたい。

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