2016年05月12日付

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木落し坂にせり出す御柱。それを支える太さ10センチ足らずの綱を斧の一振りで絶つ。建て御柱では先端を斧(よき)と手斧(ちょうな)だけで三角錐に整える。昔は大工仕事に不可欠の道具も今は6年に1度の出番。斧衆は練習を重ねて本番に臨み、衆目の中、大役を果たした笑顔に安どがにじむ▼祭りでそんな重責に挑むのは斧衆だけではない。先導の旗持ち、御柱が通った後の掃除まで奉仕に関わるそれこそ全ての人が責任を負っている。その誇りと自覚が祭りを支え、ひたむきに職責を全うする姿が人の心を打つ▼勇ましい曳行の後尾で、中学生らしき子どもたちが道具を乗せたリヤカーを引いていた。一人前の祭り装束を着て誇らしげ。大人と同等の仕事を任されたことがうれしいのだろう。はしゃぎたい気持ちを懸命に抑えて口元を引き締めていた▼かつて諏訪地方の警察が、「御柱年には少年非行が減る」とユニークな統計を出した。担当課長は「子どもも祭りの一翼を担い、地域の一員の責任を自覚するからでは」と考察した。今思えば子どもだけの効果ではないと感じる▼古い道具や熟練の技を尊ぶ心、各自が役目に誇りを持って取り組む姿勢、互いを認め合う気持ち。祭りで皆が自然に実践できているこれらは、日ごろの仕事や家庭、地域で自分に望まれることばかり。祭りに全力を注いでいささか放心状態ではあるが、そんな振り返りも祭りの良き余韻になる。

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