2018年7月19日付

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今年も中学校の集団登山が始まった。県内に生まれ育った者にとっては毎年恒例の見慣れた風景だろう。しかし昨今は完全徒歩だったかつてとは様子が違うという。時代の流れと言えばそれまでだが、確たる意義があって行う重要な学校行事だけに、何とも歯がゆさが残る▼上伊那地方の中学生が目指すのは標高2956メートルの中央アルプス木曽駒ケ岳。江戸時代は山岳信仰の対象だったが1891年、英宣教師のウオルター・ウエストンが登頂して以降、近代登山が始まったとされる▼中学校の集団登山も、小説「聖職の碑」の題材にもなった中箕輪高等小学校(現・箕輪中学校)の遭難事故が発生したのが1913年で、この頃にはすでに行われていたことになる。登山は確かに体力・精神的にきつい面はあるが自然に囲まれ、頂上を極めた達成感、地元民であれば地域を深く知る機会と魅力は尽きない▼ただ、生徒や保護者の意向もあって、ここ10年ほどで完全徒歩はなくなり、日帰り山行や往復ロープウエー利用―と登山ならではのじっくり自然や自分と向き合う機会ではなくなっている状況らしい▼登山には経験と知識、技術を鍛え、危険に挑んで克服する冒険的要素があり、達成した分感動も大きい。人生もまた然り―。若いうちから規範や困難を避け手軽さ便利さだけを求めた人生の先に何が残るだろうか、と懸念するのは野暮というものだろうか。 

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