2018年07月27日付

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〈あかいめだまのさそり/ひろげた鷲のつばさ…〉。宮沢賢治の「星めぐりの歌」の歌詞にある「赤い目玉」とはさそり座の1等星アンタレスのこと。夏の宵、南の空にかかるその星座の中に、赤く輝く星を見つけることができる▼血の色を思わせるアンタレスは、ギリシャ神話の軍神でもある火星(アレス)に対抗するもの(アンチ・アレス)にその名が由来するという。互いの赤さを競うようにして光る二つの星が共演するとき、古い物語に彩られた豊かな空の世界を思い描くことができる▼季節ごとに整然と空をめぐる恒星の中を、うろうろと惑うように動き回る惑星。地球のすぐ外側を回る火星はその中でも特に、地球の公転との関係で、止まったり星座の間を行ったり戻ったりと一見奇妙な振る舞いをすることから、人々の好奇心をかきたててきた▼その火星がいま、夜空で存在感を増している。2年2カ月ごと起こる地球と火星の接近で、国立天文台天文情報センターによると31日には5759万キロまで近づく。「6万年ぶり」と騒がれた2003年に匹敵する大接近で、明るい状況は9月ごろまで続くという▼〈生きてふたたび見ることのなき大きさに赤き火星の森の上にいづ〉上田三四二。次回の大接近は17年後だというから、今回の天体ショーも貴重な機会といえる。かつて運河や文明の存在説もあった赤き星はいまもロマンにあふれている。

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