2018年08月16日付

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台風の接近で連日の暑さが和らいだある日、無数のトンボが舞い立った。一帯の視界を薄暗くするほどの数。まるでチャンスは今日限りといわんばかりに激しく飛び回っていた▼盆が過ぎれば秋風が立つ│との言い伝え通り、朝晩の風が涼しくなってきた。「例年通り」であることがつくづく有り難いと思えるほど今年の夏は過酷だった。地球規模の天変地異の危機を肌で感じた▼平成最悪の被害を出した西日本の豪雨被災地では、突然家族を失い、依然行方が分からないまま盆を迎えた。その心中を思うと胸が痛む。この地方とて農家では書き入れ時のさなかに作物の生育が止まったり、病害虫の被害を受けたりして経済的な打撃は大きい▼水を乞い、雨雲の到来を切望しているのに雨量に恵まれず、片や雨雲が接近するたびに「猛烈な雨」「危機的」と警報が出る。各地の盆行事も例年通り│と安穏な気持ちでは迎えられず、空の顔色をこわごわうかがいながらとなった▼開催をめぐり波乱のあった徳島市の阿波踊りで、主催者の中止の声を押し切って千人超の踊り手が伝統の総踊りをしたという。祭りはその地の自然や信仰に深く根差しており、住民の生きざまともいえる熱の発散を行政力で束ねるのは難しいだろう。ことに自然の猛威を前に生きることの大変さを思い知った今夏、人びとが踊りに込めた祈りの気持ちもひときわ強かったのだと察する。

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