2018年08月23日付

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古い民家の構造の一つに、「通り庭」がある。表口から裏口に抜ける土間が、家の中を真っすぐに走る。今ではすっかりなくなってしまったけれど、商人や職人が住んだ町屋などに残る懐かしい造りである▼今夏、取材で何度か訪ねた下諏訪町の旧中山道沿い休憩施設「伏見屋邸」や、同町内の「宿場街道資料館」でじっくり見ることができた。建物の中に入ってみると、採光を抑えたほの暗さで別世界に来た気持ちに浸れる。通り庭が大きな風の通り道になり、吹き抜ける涼風が屋外の猛暑を忘れさせてくれた▼そもそも、古い民家には夏の暑さをしのぐ工夫がいっぱいだ。深い屋根の軒は夏の厳しい日差しが室内に入るのを防ぐし、家の周りにある植栽や裏庭は空気を冷やし、室内に風を取り込む。今風の家のように気密性が高くないから、隙間を通じて新鮮な外気が入る▼加えて、刻んだ歴史が放つ独特の雰囲気が気持ちを落ち着かせてくれる。個々の部屋を仕切る障子やふすまが取り払われた間取りを見ると、開放感を感じるし、掛けたすだれが風に揺れる風景を見ただけで涼感が増す。人の感覚に訴える和風の良さだろう▼前述の伏見屋邸では取材を終えた後、ちょっと失礼して畳の部屋に上がり、足を投げ出して休ませてもらった。「家の作りやうは夏をむねとすべし」。徒然草の一節を思い出しつつ、古民家の良さを実感した夏のひとときだった。

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