2016年05月20日付

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小学生のころ、畑でよく石を集めて遊んだ。親が草取りしている間はずっと、畑の端っこで土を掘る。出てくる石は形も大きさもいろいろで、普通の石に交じり、時折、黒くてつやつやした石片が見つかった。太古の火山活動で誕生した黒曜石である▼後に分かったことだが、畑の近くに縄文時代の遺跡があった。おそらく、出てきたのは縄文人が矢尻などに加工した後のかけらだろう。土の中から黒いガラスのようなきれいな石が出てくると、子ども心にもうれしかった。同じような体験を持つ人もいると思う▼今でこそ身の回りで見ることは少なくなったけれど、縄文時代を中心に有効利用された貴重な石だ。打ち欠きで加工がしやすい半面、十分な硬さがある。刃物のような鋭い割れ口が生じるため、矢尻や石匙などの道具の素材として使われた▼驚くのは広範囲に及ぶ流通である。北海道・十勝や九州・腰岳と並ぶ産地「和田峠周辺」(下諏訪町・長和町)の黒曜石は、500キロ以上離れた北海道南部でも確認されている。当時の生活に欠かせないものだったという証明だろう▼日本地質学会がその黒曜石を「長野県の石」として選定した。歴史背景や存在意義を考えれば、納得できる決定。岡谷市出身で考古学者の故戸沢充則さんが著書で、「大昔の人にとっては今のダイヤモンドより貴重な宝石」とつづった石への理解が深まるきっかけになるといい。

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