2018年09月01日付

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東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県釜石市鵜住居地区に、来年のラグビーワールドカップ日本大会会場の一つ「釜石鵜住居復興スタジアム」が8月末に完成し、記念試合が行われた。スタジアムが建つ場所には以前「釜石の奇跡」の舞台、鵜住居小学校と釜石東中学校があった。震災の教訓を残しながら新たな未来が始まった形だ▼東北地方太平洋沖地震で発生した津波による釜石市の被害者は2011年5月現在で死者870人、行方不明者359人。一方で、校舎は水没しながらも、両小中学校の児童・生徒で学校の監督下にあった約600人は無事だった▼小中学生たちは、地震直後から教職員の指示を待たずに避難を開始。「津波が来るぞ」などと周囲に知らせながら保育園児のベビーカーを押したり、高齢者の手を引くなどして高台に向かったという。防災教育以前からあった昔からの言い伝え「津波てんでんこ」が多くの人命を守った瞬間だ▼てんでんこ=めいめい、各自。津波が来たらそれぞれ逃げる、自分の命は自分で守る―の不文律が込められた言葉。自分が助かれば他者はどうでもいいという利己主義とは異なり、むしろ自助を強調し他者避難を促進するという▼極端な天候の変化で自然災害が各地で頻発する昨今。想定外や完全な安全はないと捉えるのが肝要か。1日は「防災の日」。自他の命をいかに守るかを考える日でもある。

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