2018年09月09日付

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〈恐れのなかに恐るべかりけるは、ただ地震なりけりとぞ覚え侍りしか〉。鴨長明は都を襲った地震の惨状を「方丈記」に記している。平家の滅亡間もない文治元年(1185年)の大地震だという。文面からその恐ろしさが伝わる▼平安末期に京都や滋賀を襲ったとされる大地震の規模は、マグニチュード7ほどだったと推定されるという。地震考古学者、寒川旭さんの「地震の日本史―大地は何を語るのか」(中公新書)に詳しい。日本の歴史はまさに地震の歴史だと、改めて認識させられた▼2011年3月11日の東日本大震災以降、列島が揺さぶられ続けている印象すら持つ。大震災翌日の県北部地震で最大震度6強を観測した栄村では、今年5月にも震度5強の地震があったばかり。同じ地点で震度7を2度観測した2年前の熊本地震も記憶に新しい▼北海道胆振地方を強い揺れが襲った。震源に近い厚真町では崩れた土砂が民家をのみ込んだ。山の斜面が大きくえぐられ、露出した赤茶色の山肌は、巨大な爪でひっかかれた傷跡のようにも見える。懸命の捜索を見守る家族ら。同じ光景を何度も見ている気がする▼恐れの中にも恐るべきものは、ただ地震であると思い知らされた―。地震の怖さを身をもって体験したであろう歌人の言葉が実感として理解できる。その人は人の忘れやすい心も嘆いている。いくたびの教訓を減災につなげていきたい。

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