2016年05月23日付

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ミズメという木は古くは弓の材料に使われたという。広く分布し、材が硬いため建築や家具に使用する。万葉集に歌われる「梓弓」や「玉梓」の梓は、このミズメだとされる(井上俊「いにしえの草木」)。梓は皇太子さまの「お印」の木でもある▼来月5日、長野市で全国植樹祭が開かれる。天皇、皇后両陛下が6種類の木をお手植えされる予定だ。皇后さまが植えられるのが、このミズメとタカトオコヒガンザクラ、シナノキである。樹皮や花、紅葉が美しい樹種として選ばれたという。両陛下お手植えの木は、信州の森林づくりのシンボルになるだろう▼植樹で思い浮かぶのは、岡谷市の横川山だ。明治・大正期、隆盛を誇った製糸業の燃料用に伐採が繰り返され、終戦直後には丸裸同然だった。山に保水力がなくなり、麓の川は雨が降れば氾濫し、渇水期には水無し川となった▼戦後、カラマツなどの植樹が始まった。地域住民を含めた関係者の努力が実り、半世紀後には豊かな森林に生まれ変わる。岡谷市の重要な水源涵養林となり、林野庁の「水源の森百選」に選ばれている▼環境省によると、世界では森林が毎年500万ヘクタール余りも減っている。主な原因は農地転用や、まきの過剰伐採という。植林も行われるがなかなか追い付かない。だが横川山のように、人の手で失われた森はきっと人の手で再生できる。全国植樹祭を前にその思いを強くした。

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