2016年05月26日付

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車列前方の様子が何かおかしい。トラックが警笛を鳴らして1台の車を追い越してゆく。前に迫ったその車を見ればいつもの御仁だった。運転するお年寄りは後続車のいら立ちも知らずご機嫌そうだが、低速なうえに車体が左右に振れて、後方はハラハラ▼茅野署管内では交通死亡事故が多発し、ついに非常事態宣言が出された。発生数が県内最多。管内在住のドライバーが他地域で起こした事故も数えたらさらに増える。その多くが高齢者がらみ。高齢運転者が起こす事故はこの10年、年ごとに増えている▼「危険なら免許を返納すべき」と安易にいかないから悩ましい。山あいに農地が広がる県内の地勢では、乗り物がなければ買い物一つにも不自由だ。公共交通をどんなに充実させても、田んぼの水見のたびに使えるわけがない▼そんな暮らしの中で運転歴に自ら幕を引くのは勇気がいる。決断を先に送るうちに体は衰え、自分の運転能力が損なわれたこと自体を判断できなくなる。認知症を患うこともある。今のところ返納後の代替案も、事故抑止策も見いだせず、関係者は頭を抱える▼死亡事故につながる可能性もあるだけに、対処は喫緊だ。この際、司法だけで頑張らず、市町村の健診事業や介護予防といった医療、福祉と連携して、事故と事故につながる病気の早期、同時発見を目指してはどうか。対策は実態を正しく知ることから始まる。

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