2018年10月22日付

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子どもの頃に食べた味で忘れられない一つが、桑の実である。今のように菓子類が豊富にある時代ではなく、野の甘みは腹空かしの子どもたちには最高のおやつだった。背丈以上もある桑畑に潜り込み、小さな実を摘んだ思い出は消し難い▼桑の実のおいしさとともに記憶に残っているのが、手を赤黒くべったり染めた果汁だ。繊細でつぶれやすく、色が鮮やかな実のため、どうしても手や口につく。大人に隠れて食べに行っても、帰宅すればすぐに行動が知られてしまった▼考えてみれば、そうした手触りを伴う郷愁の食べ物は数多い。おにぎりは手にはりついて残る湿ったのりやご飯粒が、食べた満足感を高める。熟した柿は破れそうになった皮をそっと持つ感覚が何とも言えない。味覚以外の部分を含めての味ということだろう▼森永製菓がチョコレート菓子「チョコフレーク」の生産を来年夏までに終えるそうだ。甘さと独特のさくさく感で人気を集めたけれど、高カカオに需要が移行したのに加え、溶けたチョコで指がべとつき、スマートフォンを操作しながらでは食べにくいのが一因という▼最近ではポテトチップも箸などを使って食べる若者が多い。つまむための専用の器具まであるというから驚く。スマホが操作しにくいとはいかにも現代的だけれど、食べ物には何らかの手触りがあってこそ趣を増すのだと、昭和生まれのおじさんは思うのだが。

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