井戸尻考古館が人気 入館者7千人超の見通し

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縄文時代の暮らしや思想を、独特の考察で細やかに解説する井戸尻考古館の小松館長

富士見町の井戸尻考古館(小松隆史館長)の今年度入館者が11月末で約6500人となり、昨年より1000人ほど増加した。今年度末には年間入館者数が16年ぶりに7000人を超す見通しとなった。縄文文化に対する独特の考察と、学芸員による細やかな展示解説が縄文ファンの口コミで人気を広げ、八ケ岳周辺14市町村にかかる縄文文化の「日本遺産」認定、国立博物館への出品などでの知名度アップが追い風となった。同館では来館者の縄文時代への関心が近年、変化していることに着目し、井戸尻ならではの研究と保護、情報発信の強化に意欲を新たにしている。

■団体客激減で一時5000人台に

同館は1974年に開館。80年代には年間2万5000人超が来館したが、小中学生の団体客の激減で2011年には5000人台まで落ち込んだ。その後は毎年右肩上がりで30、40代の女性を中心に若い世代の来館が特に増えているという。

人気の核には同館が発信する独自の研究論がある。土器に表された文様、遺跡発掘現場の様相など図像から縄文時代の人びとの暮らし、精神性を読み解く手法で、太陽と月、大地などと深く結びついた世界観を展開。教育界が「縄文人の暮らしは狩猟採集」を通説とする中、「焼き畑で雑穀を栽培していた」との常畑農耕論も進めてきた。

時に学会の”異端”と称されもした独自の考証を、同館の展示は全面に押し出して特化。これらを学芸員が希望に応じて1時間から1時間半に渡り、丁寧に解説する。

■大震災以降は来館目的変化

小松館長は「東日本大震災以降、来館の目的が変わった」と話す。「日本人の源流、今を生きるための手がかりを求めて訪れる人が多い。自然の猛威と共存した縄文人に生き方のヒントがあると感じているようだ」という。来館者増加の背景で、井戸尻ならでは考証が現代の情勢に不安を抱えた人たちの心を引き付けている-とみる。

原村に2年前に移住したという40代の女性は、他県の人に同館を勧められたという。縄文時代の暮らしや思想を、まざまざと描いてみせる小松館長の解説に「こんなに深い世界があったとは。面白く味わった」と土器に見入った。

町内では住民による応援活動が館を支え、町内小中学校での縄文体験活動の取り組みも充実してきた。小松館長は「文化財はその地の先祖からの生き方、私たちの未来の生き方を教えてくれるもの。復興のよすがともなる。井戸尻はこの地に根差した『おらぁとう(自分たち)の考古学』をさらに突き詰めながら、多様多角な価値観を示していきたい」と話している。 

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