辰野町新町区 防災マップ作り大詰め

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熱心に議論しながら防災マップ作製に取り組む住民たち=11月17日、新町コミュニティセンター

辰野町が新町区で進める、住民参加型の「崩壊危険箇所抽出・防災マップ作製事業」が大詰めを迎えている。専門家による講義や現地調査を通じて山地崩壊のメカニズムを学び、科学的根拠に基づく防災マップを作る取り組み。11月までに集積した情報から避難ルートなどを図上へ書き込む作業を終え、マップの完成を待つばかりとなった。災害時の避難行動や日頃の備えに役立つ高精度マップの実現はもちろん、主体的に活動した住民たちの防災意識を高める効果も生み出している。

町は2015年度、県補助のモデル事業として小野区で第一弾を実施し、住民の防災力向上につながる取り組みの有効性を確認。町内各区への横断展開を視野に、今年度初めて単独事業化した。

新町区での事業は8月にスタートした。航空レーザー測量で区内全域の地形データを取り、表層崩壊が起きやすい危険箇所を抽出。9月末には複数の危険箇所から、新町諏訪神社北西側の山林を選んで現地調査を行った。

住民たちは雨の中で斜面を登り、危険箇所を目の当たりにして「土砂崩れで西天竜用水路が埋まったら、下の住宅地へ水があふれる」と表情をこわばらせた。葉や水分が堆積し崩れやすい「風化土層」を探すため、交代で土検棒を地面へ差し込む。棒を握る手に、自然と力がこもった。

野澤秀夫区長(70)は「現地調査を行った頃から、防災対策が日常の話題になるなど住民の関心がぐんと高まった」と振り返る。「普段は何気なく見ていた山を歩き、土の感触や災害のリスクを確かめる。防災意識を養うのに、こうした体験に勝るものはないだろう」と実感している。

防災マップは、災害の発生源を特定し、土砂流路(崩れる方向)や避難ルートを細かく表記する。マップ作りには約30人が参加して危険箇所の抽出図面や住宅地図と向き合い、避難経路を書き込んだり土砂流路から離れた場所へ避難場所を設定したりした。

住民は「平成18年豪雨で、ここは道路の高低差に関係なく水があふれた」「まとまった雨が降ると、山から出た水が側溝を越える」と、データにない水路や過去の災害体験も含めて真剣に議論。図面は、情報を書いて張り出した付せんでいっぱいになった。

防災マップはA3判で発行し、年度内に区内全戸へ配布する予定。町と区では春先までに、マップを用いて避難訓練を行いたい考えだ。

事業監修者の元信大農学部教授の山寺喜成さん(81)=同町沢底=は「新町区の住民は体験的な学びから、防災の知識や対処法を自分のものにしている」と評価。「住民が自ら防災マップを作る事業は全国でも数少ない。安全なまちづくりのテーマにおいて、一つの答えになる」と今後の普及へ期待を寄せている。

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