2016年06月03日付

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俳句の世界で、「蛙」は春の季語なのだという。陽気が暖かくなって冬眠から覚めると、活発に動き出す。季節が進んで、田植えが済んだばかりのこの時期。水田地帯は夜ともなれば、「ゲコゲコ」と、鳴き声があちこちから聞こえてくる▼標高約1630メートル。下諏訪町郊外にカエルの声がひときわ美しく聞こえる場所がある。自然豊かな八島ケ原湿原。緑を縫うように延びる遊歩道を散策すれば、鳴き声を楽しむことができる。朝に夕にカエルの大合唱となることも多い▼鳴き方にちょっと耳を澄ませてほしい。「コロロ、コロロ」。普通のカエルより音のトーンが一段高い。慣れてくると、はっきりと聞き分けができる。声の主は町の観光PRキャラクターのモチーフにもなっているシュレーゲルアオガエルである▼本州から四国、九州に広く生息する。いろいろな所で聞けるということなのかもしれないけれど、「あざみの歌」の発祥地でもある静かな高層湿原から聞こえてくる鳴き声には、特別な趣がある。環境省が定める「日本の音風景百選」に選ばれている▼初夏の好天に誘われ、遊歩道を歩いた。園地までは聞こえていたエゾハルゼミの音が湿原に入るとやんで、「コロロ…」と澄んだ声が耳に届いてきた。案内施設の八島ビジターセンターあざみ館によると、今月末までは楽しめそうだという。シーズン中に一度は訪ねたい身近な音の名所である。

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