2016年06月09日付

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足元に咲く野の花が、気づけば梅雨時、夏のものに変わっている。花は季節の移ろいを告げる暦のようなもの。時期がくれば花は咲き、鳥もさえずる-日ごろ、そう楽観しがちだが果たして確かか▼富士見町と伊那市にかかる入笠山の自生植物、釜無ホテイアツモリソウはかつて至る所で見られたが絶滅寸前にある。町と町民、企業などが協力して自生地を守り、10年かけてやっと30株超に増えた▼人工的に増やそうと培養にも取り組むが、発芽した約3万5千株のうち無事育ったのはわずか2割。自然は複雑な条件の繊細な均衡で成り立っていて、それを保つことは想像以上に難しい。ところが滅びる寸前に追い込まれると価値が上がり、盗難も後を絶たない。人間はつくづく身勝手で欲深い▼そんな罪悪感はなくても、暮らしの中でつい軽んじてしまう事柄は多々ある。たとえば家族や友人にぞんざいな態度を取る。仕事を積み残す。出来ない課題をあきらめる。いずれも「いつか何とかなる」という甘えがあるからだ▼ところが、朝元気に出かけたのに事故で戻らぬ人になる。突然病に倒れる。そんな不幸は誰の周りにも常にあり、平穏な翌日が来る確約などないのだと、ある時突如思い知らされる。身近の命、人の心、明日という日も「あって当然」のものは一つもない。力の出ない日やつらい時、こんなふうに考えたら一日の生き方が変わってくる。

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