2019年03月02日付

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連載記事の取材で半年間、週に1軒のペースで伊那市内の店を訪ねた。商売の種類が違い、老舗あり、創業間もない店舗ありだったが、店主が語る店づくりには、どれも自信のようなものがうかがえた▼代々続く商売を担う店主からは、店の看板を守る自覚が伝わってきた。先代からもらった名品だけでなく、時代に合った工夫をして顧客をつかんでいた。若い創業者は意欲にあふれていた。夢を実現させた人は輝いて見えた▼中学生の頃からパン屋を夢見ていた小池未来さんは自ら道を切り開いた。「最初は何から手をつけたらいいのか分からなくて、小麦を勉強したらいいのかな―ぐらいの気持ちで上伊那農業高校を選んだ」と明かす。卒業後は専門学校でパン作りを学び、都内で修行して帰郷。古里に宝石箱のようなパン屋を開いた▼スポーツバーを開業した那須野浩太郎さんは東日本大震災の2カ月後、壊滅的な被害を受けた宮城県南三陸町にボランティアで入ったことが転機になる。全てのものが失われた被災地の現実に衝撃を受け、「生きている自分が安定を求めていていいのだろうか。自分のやりたい仕事は何だったのか」と考えるようになった。飲食店で経験を積み、自分の店を開いた▼震災から間もなく8年。被災地の今を伝えるニュースが増える3月だ。那須野さんは創業を決意した頃の自分を思い出し、気持ちを新たにしているだろうか。

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