2019年03月10日付

LINEで送る
Pocket

福島県いわき市出身の写真家、高橋智裕さん(45)のブログは2011年3月24日の日付から始まる。震災当日は市内の小名浜港に居た。避難する人々を、街や港の様子を撮影していた▼甚大な被害を出すことになる第2波の津波が取材中に押し寄せた。足をすくわれて流された。海上保安庁の職員に手を引っ張られ、命拾いしたことをブログでつづっている。昨秋に県看護協会伊那支部が伊那市で開いた防災の公開講座でも、あの日の光景や体験を語った▼公開講座で示した写真には迫り来る津波が含まれていた。高橋さんが巻き込まれる前に撮影した写真だった。巨大な壁に見えた。「東北の太平洋沿岸は頻繁に津波が来る。こんな大きな津波が来ると思っていなかった」。慣れ、油断、過信があったから撮れた写真と言った。だが、災害ではそれらが命取りになると、実体験をもとに伝えた▼災害の犠牲者を、つらい思いをなくしたいと災害防災アドバイザーになった。「想定外が起きるから災害になる。防災で一番大事なのはとことん最悪を想像すること。考えることにお金は掛からない。考えるだけで犠牲は減る」。伊那で聞いた言葉が頭に残る▼結婚を機に金沢市に移り住んだが、被災地を取材し続けている。数日前のブログでいわきへ向かうと報告した。大切にするのは「写心」。被災地のいまを、被災者の思いを、今年も古里の写心から伝える。

おすすめ情報

PAGE TOP