2019年03月22日付

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「親ばか」という言葉はよく聞く。が、「親利口」というのはあまりなじみがない。諏訪市の宮坂麻理さんのエッセー集「えんだくりII」を読んでいて出合った言葉だ。本当の愛情とは何かを考えさせられた▼宮坂さんは体と言葉に障がいのある女性だが、エッセーは明るくユーモアに富んだ内容だ。「親利口」は宮坂さんの父親のこと。一緒に祭りに行くと、足の不自由な娘に「ついてこい」と、でこぼこした坂道を歩かせるような厳しさがあったという▼宮坂さんはときとして、甘い親ばかの親に憧れたそうだ。しかし50歳を迎えるようになり、親利口な父に感謝の念を抱いた。「障がいがある子ではなく、普通の子として、一個の人間として育ててくれた」。誰も、かわいい娘に厳しくはしたくない。自立した人間に育ってほしい、という愛情だったに違いない▼若い人の中には4月から新しい職場という人もいるだろう。いろんな上司や先輩と出会い、指導を受けることになる。中には厳しく、ちょっぴり意地悪にみえる人がいるかもしれない。その厳しさの本質が問題だ▼行き過ぎた指導はパワーハラスメントとされ、今は教える方も難しい。宮坂麻理さんは「もし私が障がい児の親になったなら、ここまで厳しくできるだろうか」と父を振り返る。厳しい優しいはともかく、何十年も後に感謝される指導ができたら、お互いこんなうれしいことはない。

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