2019年04月05日付

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人の体は60兆個ともいわれる膨大な数の細胞で構成されているが、個々の細胞は絶えずつくり替えられ、1年もたつと物質的には別人になっている―。ある生物学者の話を聞き、不思議な感覚にとらわれた。では私とはなんだろうと▼細胞レベルでは絶え間なく転変していても、なお私であり続けられるのは、他者の存在があるからだ―。理論物理学者の佐治晴夫さんの講演会で、思いもよらない一つの“回答”に出合った。生命の不思議について語られた話の鍵となる言葉が「相互依存」だった▼佐治さんは「水が水ではない水素と酸素からできているように、全ては互いに依存し合っている。あなたもあなたでできているのではなく、あなた以外の物でできている」とし、「他者や環境など周りとの関わりがあるからこそ、自分であり続けられる」と述べた▼春は出会いの季節である。新しい学校や職場で仲間のつながりも広がるだろう。他者の集合体が自分だとみなせば、人間関係が広がった分だけ自分が大きくなれるとも言えるし、他者の視点を通して、これまで知らなかった自分を発見する契機になるかもしれない▼相互依存の考えに立てば、自分もまた誰かにとってかけがえのない存在になれる。「私たち人間にとっての幸せは、『あなたに出会えてよかった』と言ってもらうことに尽きる」と佐治さん。すてきな出会いの多い春になりますように。

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