岡谷製糸王国記など刊行 市川一雄さん悼む

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文芸誌「窓」2号発刊に際し、長野日報社の取材に答える市川一雄さん(右)と、市川さんと「窓」を創刊した故宮坂水穂さん=2014年3月

信州の岡谷が日本の近代化を支える製糸業の一大集積地になった経緯や、生産の主役となった工女たちの群像を、文芸作品「岡谷製糸王国記」としてまとめた編集者・ライターの市川一雄さん(84)=下諏訪町緑町=が17日、病気のため亡くなった。20日葬儀が営まれる。生涯現役を貫き、諏訪地方を題材としたフィクション、ノンフィクションを執筆、編集。諏訪市信州風樹文庫など各地で講演も行い、文学愛好者の輪を広げた市川さん。多くの人がその逝去を悼んでいる。

市川さんは諏訪清陵高校を卒業後、地方紙湖国新聞編集長を経て編集工房「あざみ書房」を創設。小説「と川石人譚」、評伝「諏訪人物風土記」、共著「戦争が消した“諏訪震度6”」などを出版した。一方で、新田次郎顕彰会・諏訪こぶしの会会長、諏訪市文化財専門審議委員、下諏訪町文化財専門委員、文芸誌「窓」の編集発行人を務めていた。

療養生活が始まった昨年からはこれまでに増して執筆意欲を高め、「岡谷製糸王国記」は、半世紀にわたって集めた膨大な資料を基に書き上げた。昨年9月に600部発行、「何もない村に起きた奇跡が分かる」と激賞され、300部増刷。3月には改訂版が鳥影社から出版されている。幼なじみで物理学者の名越智恵子さん=藤沢市=は、「糸都岡谷の諸相をこれほどまでに多角的に描いた書物はないと思う。精魂込めた大作」と評価する。

市川さんと小学校の同級生で書家の渡部清さん(84)=東京都北区=は、市川作品の多くの題字を書いてきた。訃報に接し、「とことん調べて書き込む探求心が強く、その根底はこよなく郷土諏訪を愛していた。行き来が途切れた時期があっても、空白を感じさせない魅力があった」

60年近い親交があり最後まで寄り添った河西節郎さん(85)=諏訪市清水=は、「先頃、短編小説集『四王湖岸』を刊行、霧ケ峰ビーナスラインのコース変更の真相を探る『霧の群像』を執筆中だった。発刊に至らなかったのは無念と思うが、横で見ていて精根尽きるまで作家だった」。「お別れは痛恨の極みだが、とわの世界でまた親しくお会いしたい」と話している。

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