2019年05月11日付

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冬の三寒四温が長引いて、スイセンに八重桜、桃花にツツジとさまざまな花が一斉に開いた。2カ月分ほどの季節が凝縮されたかのようだ。信州の春は短く、彩りに目移りしてじっくり味わえずにもったいない▼筆者の話で恐縮だが、小学生の頃の登下校。初めての一人歩きは見るもの全てが珍しく、草花一つにも目を奪われた。ある日、花の上でせっせと働くミツバチに「本当に刺すのかな」と疑問が湧いた。指を伸ばしてつまんだ途端、いたずらな好奇心を激しく悔いた▼腫れた親指を押さえて半べそで家路を急ぎつつ、自然を侮るなかれと痛感したし、後にあのひと刺しは命と引き換えだったと知り、ひどく胸が痛んだ。そんな事ごとを顧みれば、あの頃ほど自然とじっくり触れ合えた時間は以後にない。さまざまに思いを巡らせて心と向き合う時間でもあった▼近頃は学校へ車で送迎される子どもが増え、校舎周りに車列の渋滞が起きるほどだそうだ。先生たちは「悪天候の中を苦労して歩くのもかけがえない体験。『かわいそう』ではなく、心豊かな学びの時間と考えて」と徒歩通学を訴える▼連休明けは登校がつらい子どもが増えると聞く。その気の重さを一歩ずつ踏みしめて乗り越えることで自信も芽生えるのではないかと思う。片や大人には子どもが安心して通える環境を守る責務がある。大津での痛ましい事故をくれぐれも教訓にしたい。

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