2019年05月22日付

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ヒノキの芳香に出合うと幸せな気分になる。全国から大工や職人ら430人が伊那市に集まり、鉋の薄削り技術を競った「全国削ろう会信州伊那大会」。ヒノキ材に向かい、透き通るほど薄いかんなくずを出す職人の技に驚くとともに、充満する香りを通して木の良さを実感した▼削ろう会会長の上條勝さんは県上松技術専門校の元校長。卓越した鉋の腕を持ち、全国戦没者追悼式の慰霊標柱の制作に携わったこともある。2016(平成28)年6月に長野市で開いた全国植樹祭。天皇、皇后両陛下の「お手播き行事」で使われたお手播箱も手掛けた▼最高級として名高い木曽ヒノキで箱の外枠を組み立て、1964(昭和39)年5月に県内で初めて全国植樹祭が開催された茅野市八子ケ峰のカラマツで作った内箱を納めた。定年退職目前。昭和と平成をつなぐ大仕事に挑んだ▼大会は35回目だが、県内初開催だった。古来からの伝統の技と木の文化の継承が目的だ。4年前に取材でお会いした際に上條さんは「いつかは信州で」と思いを語っていた。念願かない「身の回りにもう一度、木を感じる生活が広がってくれれば」と期待した▼植えて育てて、採って活用し、また植える。健全な森林づくりには担い手、作り手、使い手のつながりも欠かせない。森の恵みや木の温もりを肌で感じよう。市民参加の森林づくりや木工体験などの場が豊富な信州である。

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