2019年5月25日付

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命とは何て素直なものか。春先の不安定な気候がどう響くかと案じていたが、富士見町内では、絶滅寸前の希少植物・釜無ホテイアツモリソウを種から育てて野生に返す取り組みが足踏みを余儀なくされた▼自生の数株の種を10年近くかけて育苗し、やっと自然の条件下での増殖にこぎつけた。昨年、富士見パノラマスキー場の麓にあるその実験園を初公開したが、今季は多くの花芽が霜で枯死し、公開を断念するほどのダメージを受けた▼片や同スキー場山頂近くの実験園で保護の手を加え、育てている株は今月下旬に無事、開花する。同じ山の土にありながらのこの違い。自然の繊細さと、一旦損なった命の復元の難しさを痛感する。山頂の園内で見られる今年の花はその貴重さを改めて教えてくれそうだ▼同所でもう一つ、命を考える機会をくれる催しが開かれている。口で筆を執る詩画家、星野富弘さん(73)の作品展だ。24歳の時に事故で両手足の自由を失った。絶望を乗り越えて、植物の生命力に自身を重ねる。茎が折れてもその先に芽を出し開いた菜の花に、自分も同じ水を飲み、光を受けているのだから―と力を絞り出す▼命はもろいが、たくましくもある。「そう簡単に成功するはずもない。失敗を次の一歩に」とアツモリソウ保護のメンバーは言う。強さとは、置かれた環境、状況を受け入れた先にある「諦めない気持ち」なのだろう。

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