2019年06月03日付

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哲学者の長谷川宏さんに、森の深さと豊かさについて書かれた文章がある。森閑の世界に身を置いて感じる自分の存在の小ささと、自身を包み込む森の大きさ。〈その深さとゆたかさを、昔の人は神と名づけたのかもしれない〉と▼谷川俊太郎さんの詩作に長谷川さんが短文をつけた「魂のみなもとへ 詩と哲学のデュオ」(近代出版)から引いた。古来、信仰の対象であった日本の森。自然を崇め、恐れた遠い昔とは比べようもないが、心の癒やしを求めて森に足を運ぶ人は少なくないだろう▼日本が世界屈指の「森の国」であることを実感させる数字がある。FAO(国際連合食糧農業機関)の公表したデータによると、日本の森林率(国土面積に占める森林面積の割合)は68・5%で、先進国ではフィンランド、スウェーデンに次いで世界第3位に入る▼ヨーロッパ諸国の中には「大開墾時代」を経て伐採し尽くされた森もあるという。ロビン・フッドが隠れ住んだ英イングランドのシャーウッドの森も、炭田採鉱のため伐採された歴史がある。こうしてみると、日本の豊かな自然環境は本当にプライスレスだと思う▼「森林環境税」が2024年度に導入される。国内に広大に存在する荒廃した森林の保全などに充てるという。08年度に森林税を独自に導入した長野県では、使途に厳しい目が向けられてもいる。森をよみがえらせる制度であってほしい。

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