姿消すシルク遺構 往時しのぶ寄宿舎解体 岡谷

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岡谷市川岸中で1940年代初めまで操業していた旧「イリジョウ柘植敏鎌(つげとしかね)製糸場」の跡地で、昭和初期に移築された同社の寄宿舎の取り壊し作業が行われている。製糸場は既に姿を消し、従業員用の寄宿舎のみがほぼ原型に近い形で残っていたが、老朽化に伴う安全面の配慮から解体されることになった。

岡谷蚕糸博物館によると、旧イリジョウの寄宿舎は昭和初期に製糸関連の会社から移築されたとみられる。建物南側が天竜川に面した寄棟造りの木造総2階建て鉄板ぶきで、真壁造り白漆喰(しっくい)塗りの仕上げ。延べ床面積は約390平方メートル。複数の三角形による骨組みのトラス構造を用いている。1階に台所や大広間など10部屋、2階に8部屋があった。

柘植敏鎌氏の大甥に当たり、建物を管理する柘植達也さん(51)=川岸中=によると、寄宿舎には沖縄県や新潟県など各地からの従業員が家族や個人で入り、最盛期には30人ほどが生活。戦中戦後には空襲で疎開してきた人も入居していたという。

文化財などには登録されていないが、解体に際しては市や岡谷蚕糸博物館へ連絡し、産業史の資料として残すため間取りなどを調査した。

柘植さんは「子どもの頃に良くこの建物へ遊びに来た。近所の方も『よくここで遊んだ』と懐かしみ、なくなることを寂しがってくれた」と回想。「建物がある場所に人が集い、地域産業を支える。その姿は今も昔も変わらないと思う」とし、「女工哀史」などで厳しいイメージが広く伝わった製糸業だが「家族が集まって食事会をしたり、御柱祭にはお客を呼び合ったりしたと聞く。皆で支え合って過ごした製糸業関係者の姿がここにあったことを伝えていけたら」と話していた。

岡谷蚕糸博物館の高林千幸館長(65)は「一時代を築いたシルク関連の建造物が姿を消すのは寂しいが、一方で今まで保ってくれたことに感謝している。調査で写真や資料を残すことができて良かった」と話していた。

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