2019年08月07日付

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「いそがし」に取り憑かれると、やたらとあくせくし、じっとしていると何か悪いことをしているような気分になる。逆にあくせくしていると奇妙な安心感に包まれる▼そんな妖怪を「ゲゲゲの鬼太郎」などの作品で知られる漫画家の水木しげるさんが著書「水木しげるの憑物百怪」で描いている。思い当たる人もいるだろう。生産性や効率性といった物差しで「速いことはいいことだ」という価値観に支配され、歩みを止めれば取り残される。そんな現代社会の悲哀も感じる「いそがし」である▼しかし、歩みの速さは人それぞれであり、他人が決めることではない。7月の参院選で当選した難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の舩後靖彦さんと重度障がい者の木村英子さんが初登院するニュースを見て、そう思った▼声が出せない舩後さんは歯でかむセンサーでパソコンを操作して意思を伝える。少し時間がかかるが、遅いと感じるのは、いわば健常者の尺度で見ているからであり、舩後さんにとってはおそらくこれが普通なのだろう▼高齢化が進む中で、誰でも年を取れば多かれ少なかれ心身に支障を来す。若く健康な時には当たり前にできていたことができなくなったりする。誰にとっても生きやすい社会。その基準をどこに置けばいいか。障がい者を特別扱いすることではない。他人事ではなく、自分事として向き合っていく姿勢が大切になる。

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