ライチョウ生息地復活事業本格化 来年度環境省

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国特別天然記念物のニホンライチョウが絶滅したとされる中央アルプスで、環境省は来年度、生息地の復活事業を本格化させる。今年度試みた卵の移植に加え、乗鞍岳から3家族約20羽を中アへ移して計4家族の定着を目指す計画を検討している。キツネやテンなどの天敵から守る新たな手法も導入するなど、捕食者対策を進めて生息しやすい環境を整える。計画は年内に調整を図り、専門家などでつくる同省の保護増殖検討会で正式決定される見通しだ。

今年6月の産卵期には中アに生息する成鳥の雌1羽に乗鞍岳から運んだ卵を抱かせ、ひな5羽が誕生。その後、ひなの行方が分からなくなり、天敵に捕食されて死んだと推定された。そのため来年度は、ひなが育つまで夜間などに専用ケージに収容して守る「ケージ保護」を導入予定。また、生き残っている雌の存在によって成長した個体ならば生存できる環境があると考えられており、来年度事業は復活に向けた大きなステップとなりそうだ。

計画は、信州大の中村浩志名誉教授(鳥類生態学)からの提言を基に具体化を目指している。同省によると、ひなの生後1カ月の生存率は2割に満たない。ケージ保護では、天敵などに襲われて死ぬ可能性が高いふ化直後のひなと母鳥を収容して守り、外に放す際には中村名誉教授らが付きっきりで見守る。この手法は南アルプスで2015年から実施され、捕食者対策と合わせて生息数を約3倍までに増やしたという。

調整している移植の日程案は、6月上旬に約170羽が生息するという乗鞍岳から有精卵を中アに運び、雌に抱卵させて1家族を誕生させる。約1カ月間はケージ保護する。さらに乗鞍岳で同じ時期に誕生する3家族を保護し、ひなが育って生き残れる可能性が高まった8月下旬に中アへ移す予定だ。

ひなが全滅した要因となったと考えられているキツネやテンは、わななどで捕獲する対策を進める考え。登山者などが捨てた食べ物を求めてキツネなどが高山帯まで上がってきている可能性があるため、関係機関と連携して啓発を強めることにしている。

同省などは今年度の卵の移植について、以前から「復活には数が足りない」との認識を示していた。雌が生息している機会を逃さないために進めた計画であり、動物園の飼育下で誕生した卵を野生に戻す事業など、今後考えられる保全活動の試験と位置付けて試行した経緯がある。

中アの生息地復活に向けては「来年が本格的な事業となる。しっかりと検討を進めていきたい」と同省信越自然環境事務所(長野市)の福田真自然保護官。中村名誉教授は「順調に進めば繁殖に必要な最低限の集団と、遺伝的多様性も確保できると考えている」と期待している。

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