2019年09月05日付

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国道の上り坂に差し掛かったとき、視界に三日月が飛び込んできた。なんとなく黄色が強く、印象的だった。どこかに車を止めて眺めてみようと場所を探したが見つからず、商店街を抜けたところで車を降りた。だが、既に西の空から消えていた▼稜線が深く切れ込んだキレットの向こうに見えていたのか、場所を変えたことで陰に隠れてしまったのかもしれない。諦めて車に乗ろうとしたときに、ふと思った。そういえば、このところ夜空を見上げるような気持ちの余裕がなかったな…と▼星は全くの素人だが、カシオペア座と北斗七星ぐらいは分かる。北の方角をぼんやり見詰めているだけだったが、しばらくすると北極星を見る自分の視線を軸に、星空が回っているような不思議な気分を味わえた。都会から来た人たちが、伊那谷から見える星空に感激するのも分かる気がした▼虫の声に包まれての星空散歩のひとときだった。暗闇では五感が仕事をしてくれるもので、遠くからトコトコトン―と聞こえてくる太鼓の音にも気が付いた。秋祭りに向けて年番耕地の氏子たちが練習を始めているのだろう。今年の夏の暑さに参っていただけに、かすかに響く秋の音にはほっとした▼稲が実り、果実が熟れ、山でキノコが採れる頃になれば秋祭り。作る人も食べる人も、笑顔でその日を迎えられるといい。地域の笑い声が鎮守の森の神様を一番喜ばせるそうだ。

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