2019年9月20日付

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「セリ矢」と呼ばれる石割り道具が打ち込まれていく音が、一打ごとに高くなっていくのが分かった。「効いてきた合図です」と石匠が言う。もう一度、石頭=金づち=が振り下ろされた瞬間、ピシッという音がした。大きな石にひびが入った▼目と耳と心で感じてほしい―。開講のあいさつで公民館長が言っていた意味が分かった気がした。伊那市高遠町公民館が現職の石匠を講師に招いて行った講座だった。重さ800キロもある御影石を小さな道具を使って割ってみせる職人の技のすごさに目を奪われた▼作業に入る前、職人たちは巨石にしめ縄を掛け、自然石を加工することを奉告する儀式を行った。「長くても40年から60年しか石の細工に関われない私たちが、何万年もかかってこの形になった石を、神様が創られたものを変えてしまうわけですから」と唐木屋石材工芸会長の唐木一平さん。謙虚に自然に向き合っている職人たちに、その姿勢を学ばねば、と思う▼石割り実演では、ドリルで開けた四つの予備穴に「セリ矢」を入れ、石頭でたたいていった。予備穴に沿ってきれいに割るためには、矢をたたく順番も力加減にもこつがいるらしい▼唐木さんによると、時間をかけて割る方がいいそうだ。大きい石は予備穴を開けたまま放っておくこともある。雨水が染み、冬の間に凍って自然に割れていくという。神様の力を借りているのかもしれない。

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