2019年9月21日付

LINEで送る
Pocket

車を走らせていると、目の前に堂々たるイノシシが現れた。すぐ後ろを数匹のウリ坊がついて行く。母子だろう隊列が道路を横断していく姿に驚き、同時に、ほのぼの感に浸った。駒ケ根市中沢での数十年前の出来事である▼豚コレラの猛威が止まらない。1年前、国内では26年ぶりとなる発生が岐阜県の養豚場で確認されてから、周辺の県に瞬く間に広がった。今月に入って埼玉県の養豚場でも感染が判明し、関東地方に拡大した。終息は見えない▼長野県内では、感染が確認された野生イノシシが100頭を超えた。飼育豚への感染も14日に塩尻市の県畜産試験場、19日に下伊那郡高森町の養豚場で相次いで確認された。今年2月に宮田村の養豚場で発生が確認されたのに続いてである。関係者の衝撃の大きさは計り知れない。手塩にかけた豚を殺処分せざるを得ない心境は想像の域を超える▼米映画「羊たちの沈黙」で、主人公のクラリスが幼い頃の体験を明かす場面を思い出した。父の死で牧場に引き取られたクラリスは、殺されようとしている子羊の悲鳴で目を覚まし、子羊を牧場主から逃がそうとするがかなわず、その悲鳴が今も頭から離れない―▼県畜産試験場では何重もの防疫体制を感染がかいくぐり、原因は分かっていないという。この先、どこまで感染が広がるか懸念され、国全体の問題として対策が急務。処分される豚たちが哀れである。

おすすめ情報

PAGE TOP