2019年10月12日付

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中川村方言かるたの「り」の読み札は「理兵衛三代 こうしゃな堤防 治水事業に力を尽くす」。「こうしゃな」は「巧みな」の方言で、江戸時代の地主、松村理兵衛忠欣らが村の天竜川に築いた大規模な堤防を顕彰している▼村の公民館報によると、「理兵衛堤防」は延長180メートルに及び、忠欣、常邑、忠良の親子三代が約60年を費やして文化5(1808)年に完成した。この間にも堤防は洪水で何度も流されたといい、借金もしたため、幕府の援助を取り付けたものの家勢は傾いたという▼大型で猛烈な台風19号に備えるよう、報道や行政からの注意喚起が繰り返されている。危険性を少なく見積もって正常の範囲内だと認識してしまう「正常性バイアス」という人間の心の癖が知られてきたこともあって、避難が遅れることのないよう、くどいほどに、強めの言葉で警告されるようになってきた▼正常性バイアスにとらわれがちなのは、こうした先人の防災への取り組みの積み重ねのおかげで、かつてに比べれば被害が少ないことも理由かもしれない。現代ほどの土木技術がなかった理兵衛堤防が築かれた時代は、災害が今よりもっと生命の危機に直結していただろう▼理兵衛堤防の工事には地元の農民ら延べ50万人余が携わったと言われている。自分たちの生活を自分たちの力で守ってきた先人への敬意を表す意味でも台風をわが事と捉えて備えたい。

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