2019年10月19日付

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「はい、おはようございます。北沢峠行きです」。朝一番便の車内に運転手の声が響くと、バスは正面に見える鋸岳の方角に動き出した。29人乗り(乗務員を含む)のバスは満員だった▼台風が来る前の10月9日、伊那市営南アルプス林道バスに乗った。平日だったが、バスを待つ登山者は大勢いて、一番便は3台の増便になった。「仙流荘」から「北沢峠」までの所要時間は55分。運転手は「私はたまに独り言を言いますから、元気な方はお楽しみください」とアナウンスし、乗客を笑わせた▼南ア林道バスは、雄大な自然や渓谷美を間近で楽しめるだけでなく、乗客を退屈させない運転手のガイドに人気がある。肉声による案内は開業40年を迎えた同路線の伝統で、12人の運転手はマニュアルを基に、それぞれが工夫を加えて案内しているそうだ▼同路線で18年間ハンドルを握る伊藤卓郎さんが「もちろん安全第一ですが、印象に残ってくれればまた乗ってくれる。私たちにできるひそかな営業です」と話していた。運転もサービスも、すべてが次のお客さまにつながる営業活動だと意識しているのだろう。見習わなくてはと思った▼紅葉シーズンを迎えている南ア林道だが、台風19号の豪雨で路肩崩落があり、林道バスは今季の営業を終了。来季までの復旧を目指して工事に取り掛かるという。運転手の独り言が聞ける日を楽しみに営業の再開を待ちたい。

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