2019年10月22日付

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新田次郎の小説・孤高の人の主人公にも描かれた登山家加藤文太郎は、大正から昭和にかけて日本アルプスや八ケ岳などで多くの雪山単独登山を成し遂げ脚光を浴びた。パーティーを組まない単独行は、当時は画期的だった▼なぜ1人を選んだのか。解説文などによると、本人に大きなこだわりがあったというよりは、無口で人付き合いが苦手な性格と、何より超人的な体力と脚力であまりに移動距離が長く足も速いため、同行できる人がいなかったためのようだ▼この夏に登った山でも、単独登山者を多く目にした。話を聞くと、やはり自分本位の気楽さが魅力とのこと。一方、遭難死の半数が単独登山者との統計もある。万一の際に助けを呼びにくいなど、危険と隣り合わせであることも自覚する必要がある▼信州大学の不破泰教授が通信大手KDDIなどと進める次世代通信規格「5G」を使った遭難対策の実証実験が先日、中央アルプスで行われた。登山者の行動を把握し、異常を検知するとドローンが駆け付け情報収集して迅速な救助に結び付ける仕組み。実現すれば登山者の大きな支えとなり、新技術の発信で中アのブランド価値向上も期待できる▼とはいえ、事故は未然に防ぐに越したことはない。加藤が数々の偉業を成し遂げた理由の一つに、小心(危険察知能力の高さ)が挙げられる。今一度、自然に対し臆病でいることの大切さを学びたい。

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