2019年10月30日付

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友人とくぐったのれんの先で店主夫婦がにこやかに迎えてくれた。客席はカウンターのみの、古いけれどこぎれいな店内。「近頃の若い人たちには敬遠されるの」とおかみさんが言う▼聞けば「対面で話をするのが苦手な人が多い」そうだ。見ず知らずの誰とでも気軽に話せる人もそう多くはないと思うが、今の時代は人と接しなくてもあらゆる知識が得られ、友人とは携帯電話で終始つながれる。他人と話す経験が不足して苦手に感じる人はやはり増えているかもしれない▼ただ、誰ともいとわず話せたとて、それはそれで失敗も多い。会話を省みて「物言いが浅はかだった」「思慮が足りなかった」などと後悔が日々押し寄せる。コミュニケーションは年を重ねてもつくづく難しい▼富士見町の瑞雲寺で青山学院大の石井光名誉教授は「幸せへの道は、ものの見方を変えることにある。自分が周囲からしてもらったこと、迷惑をかけたこと、人にしてあげたことを思い出して」と説いた。諭されて自身を振り返ると、周囲の寛容にどれほど救われてきたかを痛感する▼石井教授はこうも言う。「人はしてもらえなかったこと、迷惑をかけられたことばかり忘れず恨む」。世間を見渡せば、そんな性から生じるいさかいが家庭内から国家間まで数多い。まずは身近から、これまで先輩諸氏に受けた恩をお返しする心づもりで人に向き合えたらと思っている。

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