2019年11月01日付

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誰でも先陣を切るのは勇気がいること。リスクを恐れず果敢に挑戦する開拓者を敬意を込めて「ファーストペンギン」と呼ぶ。集団で行動するペンギンの習性に由来する言葉で、群れに先駆けて海に飛び込む最初の一羽を意味する▼ドキュメンタリー番組で見たことがある。海岸を埋めるペンギンたち。一羽が飛び込むと、それを見た仲間たちが後に続く。誰かが最初の一歩を踏み出すことで道が開いたり、事態が動き出したりする▼災害時の避難行動にも同じようなことが言えるのではないか。防災専門家の片田敏孝さんがテレビで話しているのを聞いて、そう思った。東日本大震災で多くの子どもたちを津波から救った「釜石の奇跡」の立役者といわれる人である。片田さんによれば、災害で逃げ遅れた人にその理由を聞くと、周りの人も逃げなかったからだという。それで状況を見誤ってしまったらしい▼命の危険が差し迫っているのに「まだ大丈夫」と判断し、避難をためらう。自分に都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりする「正常性バイアス」という心の働きである▼片田さんは真っ先に逃げる「率先避難者たれ」と説く。自分だけ助かろうということではない。過去の経験が通じない昨今の自然災害である。誰かの指示を待つのではなく、誰よりも先んじて行動することが自らの命を救うことはもちろん、周囲を動かすきっかけにもなる。

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