信大ががん治療研究施設 イナリサーチに開設

LINEで送る
Pocket

イナリサーチ内の研究施設開設を祝い、テープカットする関係者

信州大学は10月31日、新たながん治療法「CAR―T細胞療法」などの研究を進める「信州大学遺伝子・細胞治療研究開発センター」(松本市)の研究施設を、共同研究先のイナリサーチ(伊那市西箕輪)に開設した。施設では、飼育するサルなどへの遺伝子改変細胞の投与による安全性や効果を確認する。霊長類をモデルに安全性評価を行うのは、CAR―T細胞研究に関しては国内初の施設。安全な遺伝子改変細胞の開発や実用化の促進が期待される。

同センターによると、マウスなどの小動物の試験で人体に試すのはリスクが大きく、人体のタンパク質成分に近いサルなどの霊長類によるデータの安全性が必要とされるという。センター長を務める中沢洋三・信大医学部教授(48)は、「センターでのデータは、製薬会社に示す上で、説得力のあるものになる」とみる。

日本医療研究開発機構の再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業の一環で整備した。施設は、同社の研究棟の一部を改修して開設。床面積は約300平方メートル。飼育室は7部屋で、当面はカニクイザル用に使用。150頭程度が飼育できる規模という。ほか、検査室や作業室など8室が入る。来月末から本格稼働する予定だ。

信大は細胞を提供し、イナリサーチは安全性試験を実施し、データ解析を行う。サルから採取したT細胞をCAR―T細胞に改変し、同一個体に戻す。同社で、最長で9カ月間、サルの健康状態を見たり血液検査などを行い、安全性を確認する。中沢教授は従来の手法のウイルスを使わず、電気を活用してCAR―T細胞を作り出す研究を進めている。サルを使っての試験で、安全性が確認されれば、来年度中にも医師主導による治験に取り組みたい考え。自身の研究だけでなく、国内企業も利用できるようにしたい考えで、「薬になる前の最終段階の試験はこれまで海外に委託されていたが、センターで請け負うことができれば」と期待する。

ラボ開設を機に、信州大学と同社とは、これまでの連携体制の強化を図る包括連携協定を締結した。信大の濱田州博学長は「センターが着実に成果を上げ、世界の遺伝子細胞治療研究開発をけん引してほしい」。同社の中川賢司社長は「遺伝子治療の発展に寄与できるよう、研究実績を蓄積したい」と述べた。

おすすめ情報

PAGE TOP