2019年12月27日付

LINEで送る
Pocket

家電品が人の言葉をしゃべり、機械類が注意や警告を知らせる、そんな人工音が身辺にあふれる暮らしのせいだろうか。近頃、肉声が温かく感じられる。ことに歌声は琴線に触れる▼子どもの合唱なら皆が一つの音に心を集中して、調和を生み出そうと懸命な姿がいい。年を重ねた人なら声のゆらぎや雰囲気に人柄や人生経験の豊かさがにじみ出る。節回しや音程など技術の巧みさではなく、人の深みや思いが心に響く▼富士見町の「コーラスみさやま」は知る限りで最高齢の合唱団だ。団員の多くが80歳代で最年長は96歳。地区社協の会食で歌う楽しさを知り、仲間を募ったら30人ほど集まった。ほぼ欠けることなく今年で7年。まろやかなハーモニーを響かせる▼元音楽教諭、福田蓉子さん=同町=の指導はお年寄り相手といえども結構厳しくて、「私の声に負けてるよ。もっと頑張ってくれやい」と励ましが飛ぶ。負けじと皆の声も背筋も伸びる。「若い頃から働きづめで歌うどころじゃなかった」と話す小池婦さ子さん(88)はここで歌う楽しさ、仲間と交わる喜びを知り、気持ちの支えを得た▼歌は誰もに与えられた心の自由。日常に追われる中では口ずさむ余裕も失いがちだが、窮した時こそ旋律が心も和らげもする。さて、日本人の歌の心ともいえる年末恒例の紅白歌合戦ももう間近。この時ぐらいゆったり歌を味わって過ぎ来る年を思おうか。

おすすめ情報

PAGE TOP