5年間で生息数3.5倍 南アのライチョウ

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南アルプス北岳での国特別天然記念物ニホンライチョウの保護事業について、環境省は事業を始めた2015年度から5年間で生息数が3・5倍まで回復したとの成果をまとめた。ふ化直後のひなをケージで囲う保護や、テンなど外敵の捕獲により生息数が増加した。南アでは今年度で一部事業を終了し、20年度は生息地の復活を目指す中央アルプスで同様の保護活動などを計画している。

北岳など南ア北部でのライチョウの生息数は、統計がある1981年は推計で約160羽だったが、2015年度には23羽程度まで激減。5年間の保護事業により、今年度には約80羽まで回復した。同省信越自然環境事務所(長野市)は「絶滅危惧種の保全でこれだけの成果が得られるのはまれ。事業の有効性が確認できた」とする。

ライチョウのひなは、体温調整が未熟で、テンなど捕食動物に襲われるため、ふ化1カ月後の生存率は20%程度と死ぬ割合が高い。このため、15年度からの保護事業で、ふ化直後のひなと親鳥を夜間にケージの中に入れて守る「ケージ保護」を実施。日中は外に出して人が付き添って見守るなどし、飛べるようになった約1カ月後に放鳥した。

だが、ケージ保護の導入当初は生存率が低かったため、17年度からは捕食動物の捕獲にも取り組んだ。3年間でテンやキツネを約20頭捕獲したところ、生存率が向上。同省によると、5年間で保護し放鳥したひな計72羽のうち、放鳥2カ月後に38羽の生存を確認できた。

さらに、昨年8月の調査では北岳で放鳥した雌1羽が約22キロ離れた南ア赤石岳で見つかるなど、保護した個体の長距離移動がこれまでに2例確認された。一般的な移動距離は数キロ程度といい、同事務所の福田真・希少生物係長は「飛んでいった場所で繁殖が期待できる。一部の地域での保護活動が、山域全体で生息数を増やすことにつながる可能性がある」としている。

同省は今後、中アでの増殖事業に力を入れる。来年度は、中アに1羽だけ生息する雌に有精卵を抱かせてひなを誕生させるとともに、乗鞍岳の3家族約20羽を中アへ「移住」させる計画。事業の過程ではケージ保護を採用し、中アで今年度試行した捕食動物の捕獲も本格化させる予定だ。

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