2020年2月8日付

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旅の楽しみといえば食。ご当地ならではの食材、調理の仕方、味から地勢、気候風土に、住まう人たちの暮らしぶりまで舌で実感できる。とりわけ駅弁は高揚感と旅情をかき立てる▼近頃は車での移動が主となり、駅弁を食すチャンスはかなり減ってしまったが、それでも駅弁は特別な食事。世間の人も同様のようで、百貨店が各地の駅弁を集めて開く催事はいずこも盛況、近年は海外でも人気を集めているそうだ▼とはいえ、列車の旅の全盛期には400社以上あった駅弁業者も今や80余社。県内での販売はわずか3社で、その一つがJR茅野駅の売店や富士見の駅そば店でなじみの丸政だ。今年で創業101年の老舗▼現富士見駅前で商売を始めたが、昭和初期の大火で店を失い、小淵沢駅前で再起した。3代目の名取政仁会長(75)は駅弁づくりを「精神的に厳しい仕事」と称する。時間との勝負で安全責任も重い。客の満足が地域への印象をつくる。そうした多くの厳しさを乗り越え開発した国内初、高原生野菜の駅弁は今年で発売50年。半世紀も愛され続ける商品などそう多くない▼テイクアウト食品との違いが薄れた競合過多の中、名取会長は「もう一度、本物にこだわった本気の駅弁を作りたい」と言う。狙うは“縄文弁当”。「世界に誇る八ケ岳の縄文文化を駅弁で発信したい」。駅弁を次代につなぐ挑戦心もまた、半世紀経た今なお熱い。

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