中アのライチョウ 飼育下の卵初利用へ

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中央アルプスで環境省が来年度実施する絶滅危惧種ニホンライチョウの生息地復活へ向けた事業で、中アに1羽だけ生息しているとみられる雌に抱卵させる卵に、動物園などで飼育する個体の有精卵を利用する調整を進めていることが、25日分かった。飼育下で産まれた卵を野生に返してふ化を目指す初の試みで、増殖事業を加速させる”野心的な取り組み”として長い間検討してきた。同省は「野生復帰が成功すればライチョウ保全の大きな成果になる」としている。

中アには成鳥の雌が単独で生息しているとみられ、雌が卵を産んでも無精卵のため、ふ化しない。このため同省は昨年、乗鞍岳から野生の有精卵を中アへ運んで無精卵と取り替える事業を試行し、5羽のひなが誕生。その後、天敵による捕食などが原因でひなは全滅したが、ふ化の成功により飼育下で産まれた卵を利用する野生復帰事業が実現する形となった。

2021年度以降も、飼育個体が産んだ卵を野生の巣に付け足すことを検討していて、同省はこうした技術確立により安定的な個体数の増加につなげたい考え。飼育下でふ化したひなや成鳥については、餌となる高山植物の消化に必要な腸内細菌がないなどの理由で、野生に返すことはできないという。

同省によると、ライチョウを飼育する施設は、大町山岳博物館(大町市)など全国に6カ所あり、飼育数は計42羽。うち5施設が卵の提供を可能としており、遺伝的多様性を確保するため複数の施設から運ぶ計画。中アの雌が昨年産んだ卵数と同じ8個を予定し、産卵期に合わせた6月上旬に実施する。移送方法は、駒ケ岳ロープウェイの運休で未定としている。

各施設で飼育するのは、いずれも乗鞍岳で採取した卵からかえったり、園内で繁殖したりした個体。中アの雌も乗鞍岳から飛んできたと推定されていて、同省信越自然環境事務所(長野市)の福田真さんは「遺伝的な観点からも飼育の卵の利用は妥当」と強調。「乗鞍から雌が飛んできたことなど、さまざまな巡り合わせが重なり実施できる」と成功に期待している。

来年度は卵の移送の他に、乗鞍岳で生まれたひなを含む3家族計約20羽も中アへ「移住」させる計画。家族の移住には個体に与える負荷を抑えるため、ヘリコプターを利用する方針。来年度事業は27日に開くライチョウ保護増殖検討会で正式決定される見通しだ。

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