2020年3月11日付

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今月初め、スーパーに行くと、棚の一角がごそっと空っぽだ。トイレットペーパーの品切れ状態を目の当たりにしたのである。かさばるトイレットペーパーを並べるための、何も置かれていない空間はとにかく目立った▼ドラッグストアでも同様で、積み上げてあったトイレットペーパーが見事になくなっていた。やはり品薄が伝えられたマスクの時は、専用コーナーに目を向けてようやく状況を把握したのだが、トイレットペーパーの棚は群集心理がもたらす影響の大きさを一目瞭然にしていた▼新型コロナウイルスの感染拡大が深刻なイタリア北部の高校の校長先生が、生徒に手紙を発した。「冷静さを保ち、集団のパニックに巻き込まれないこと。そして予防策を講じつつ、いつもの生活を続けてください」。共感を呼んでいる▼スリラーの巨匠ヒッチコック監督の「鳥」は「見える恐怖」を描いた。ある場面では、ヒロインの背後のジャングルジムにカラスが1羽、また1羽。しばらくしてヒロインが気付くと、ジャングルジムはカラスでびっしりとなっていた―▼対してウイルスは「見えない恐怖」である。校長先生はこうも呼び掛ける。見えない敵に脅かされた時、自分と同じような人々も脅威と思い込むことこそ危険なのだ―と。感染が100超の国・地域に及び、人種の分け隔てもなく襲い掛かるウイルス。人類の英知を試しているかのようだ。

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