備えは今 豪雨災害10年[3]砂防えん堤

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下流の病院や福祉施設を土石流から守ったヒライシ沢の間下砂防えん堤=2006年7月

下流の病院や福祉施設を土石流から守ったヒライシ沢の間下砂防えん堤=2006年7月

岡谷市の国道20号塩尻峠の道路山側にあるヒライシ沢。晴天時は水の流れすらないが、2006年の7月豪雨では2000立方メートルを超える土砂の流出が確認された。土石流をせき止め、下流の旧健康保険岡谷塩嶺病院や福祉施設、人家を被害から守ったのが前年3月に設置された間下砂防えん堤だった。

「もしこのえん堤がなかったらと考えただけでもぞっとする」。当時、危機管理を管轄する総務部の部長だった中田富雄さん(66)=岡谷市川岸中=はこう振り返る。

「こんなところ(ヒライシ沢)に砂防えん堤なんて不要じゃないのか」。災害前、そんな皮肉を中田さんはたびたび耳にしたという。「岡谷は土砂災害がないまち」という意識の住民も多かったといい、そうした「安全神話」が広がっていたことをうかがわせる。

豪雨災害後、岡谷市の砂防えん堤の整備は一気に進んだ。県や市によると、1966~2004年度に完成した砂防ダムやえん堤はヒライシ沢を含め計4基にすぎなかった。

一方、災害後は06年度の「災害関連緊急砂防事業」でえん堤20基、07~09年度の「砂防激甚災害対策特別緊急事業」で7基が整備され、このほか、両事業で河床を固め、段差を付けたり、渓流の保全を図ったりする工事などが行われた。これらの総事業費は78億4800万円に上る。

その後も整備は進み、現在市内にあるえん堤・砂防ダムは37基、4基が施工中だ。さらに長地鎮の竹の沢川でえん堤の整備計画があり、同事業が完了すれば「岡谷市にとって必要なハード事業はおおむね整備される」(市危機管理室)という。住民に著しい危害が生じる恐れがあるとされる「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」は市内の居住地域ではなくなる見通しだ。

「砂防ダムやえん堤整備で安全度は高まる。だが、それで安心してはいけない」。県諏訪建設事務所整備課の水口森隆課長(56)は、そう強調する。「岡谷市にも沢形状の地形の場所はまだまだあり、普段水の流れがなくても土石流が起きる可能性は十分にある」とし、「豪雨時は早めの避難を。『避難勧告』などは危険が迫っていることを意味する。仮に何もなく『空振り』だったとしても危険な状況にあったという認識を常に持ってほしい」と願う。

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