バリアー飛び越せ デュアルスキー普及へ

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県主催の体験会でデュアルスキーを試乗する参加者

障がいのある人がスキーを楽しめる着座式の「デュアルスキー」。国内では富士見町の富士見高原スキー場が率先して機材を導入し利用できる環境を整えてきたが、その取り組みが県内各地にも波及してきている。国内有数の大規模スキー場で、1998年の長野冬季五輪の競技開催地となった志賀高原スキー場(下高井郡山ノ内町)でも今季、デュアルスキーの体験会が初めて開かれた。記者も参加して魅力を体感し、さらなる普及に向けた課題を探った。

志賀高原で試乗体験会

デュアルスキーは、2本のスキー板の上に背もたれがあるシート付きの構造で、後ろについて支える「パイロット(操縦者)」が方向を変えて滑る。今月1日、県主催の試乗体験会が開かれたのは、国内初となるリフトが架設された志賀高原の丸池スキー場。さまざまな障がいを抱える園児から高校生までの4人が参加したほか、保護者やスキー場関係者らが次々と試乗した。

ゲレンデにシュプールを描いて気持ち良さそうに滑り下りてきたのは、東京都から参加した阿須間新ちゃん(6)。生まれつきの障がいで車いすでの生活を送る。デュアルスキーに乗ったのは初めてで、「楽しかったね」との問い掛けに笑みを浮かべて応えた。新ちゃんと並ぶようにスキーで滑った母の泰子さん(39)は「いつか息子と一緒に滑りたかった。念願がかなった」と声を弾ませた。

記者も参加魅力を体感

満面の笑みを浮かべる参加者をうらやましそうに見ていた記者にも声が掛かりゲレンデへ。「(シートに)しっかり捕まって」とパイロットから指示を受け、初・中級者用コースを滑り始めた。パイロットの操縦で左右に細かいターンを繰り返し、速度を調節。「ちょっと飛ぶよ」と声が掛かると、雪面の段差を超え宙に浮いた。緩衝装置のバネが衝撃を吸収してスムーズに着地。機能性の高さを実感するとともに、慣れ親しんできた普段のスキーと変わらない爽快感があった。

「息子に自然を楽しませてあげたい」―。そう話したのは体験会の企画運営に携わった丸池ホテルの池上さとみさん(42)=同町=。障がいのある長男に自然体験を楽しんでほしいと、スキーやトレッキングなどに挑戦してきた。ただ、障がい者が「バリアー」の多い野外で活動するためには専用の機材が必要になるが「高額で買えない」と課題を挙げる。障がい者用機材を輸入販売する事業者によると、デュアルスキーはフランスのメーカーが開発し、国内で導入するには約120万円掛かるという。

県は、障がい者用アウトドア機材を購入する団体への補助制度を2018年度に設けた。着座式スキーは1台70万円を上限に購入費の2分の1を補助するが、制度利用による導入実績は2団体と少数にとどまっているのが現状だ。利用を想定するのはスキー場の運営会社などだが、県観光部は「障がい者を受け入れるための人手の課題や、導入後の利用が見通せないといった理由で購入に踏み切れないのでは」とみている。

地域と地道に環境づくり

15年に国内で初めてデュアルスキーを入れた富士見高原スキー場の藤田然さん(44)は「受け入れ体制を整えるためのスタッフ養成を進め、地域の福祉関係者も巻き込みながら地道に取り組んできた。スキー客が減少する中でさまざまな利用者が楽しめる環境づくりが大切」と話す。「機材の存在を知らない人が多い」ことも課題とし、事業者や利用者のみならず一般の人を含めた認知度向上の必要性を挙げて、「スキー王国」と言われる長野県内で普及に向けた動きがさらに加速することを期待した。

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