備えは今 豪雨災害10年[中]伊那市西春近

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伊藤部会長が家の庭に置いている雨量観測用のバケツ

伊藤部会長が家の庭に置いている雨量観測用のバケツ

「沢一つ、尾根一つ違えば雨量が全然違うんだ。向こうが大丈夫でも、こっちでは災害が起こることだってある」

伊那市西春近自治協議会災害防止部会が、土砂災害の危険度判断や自主的な避難を検討する材料にするために、独自の雨量観測を始めたのは2012年6月のことだ。

測定場所は地区内45カ所。継続して受け持ち、定点観測をする人。地区役員の改選で測定担当を引き継ぐ人もいる。部会長の伊藤一夫さん(69)は「固定的に観測すれば危険度が分かり、いざというときの早期の避難行動につながる。多くの人に観測を体験してもらうことは防災への意識を広めることになる」と双方の効果を期待する。

10年前、同市西春近では前沢川の土石流、貝付沢の土砂流出で農地や住宅に大きな被害が出た。同自治協議会が市などと連携して「里山セミナー」を始めたのは豪雨災害翌年の3月。自分たちの身を守るために、自分たちができることをやろう―という気持ちで一つになっていたという。大規模な土石流が発生した前沢川上流を視察し、自然の猛威を感じ取った住民らは、専門家の講演を聴き、災害に強い山づくりを実習、実践。自主的な雨量測定もその一環だった。

雨量計は農薬の希釈に使う目盛り付きバケツ。家の庭などに置き、雨量を測定している。事務局は「観測データを集めることが主目的ではない。今そのときに、自分の家の周りに降っている雨の量を知り、いつもと違う雨の降り方に気付けばすぐに避難行動に移せる。大事なのはそうした意識づけ」と強調する。

防災、減災のために、雨量観測と自主防災組織の連動を模索する同部会。伊藤さんは「災害を実際に体験した地域とそうでない地域では温度差があるが、意識は相当変わった。幸い、ここ10年何も起こっていないが、防災への意識が薄れてしまわないようにしないと…」と気を引き締めている。

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