2020年3月29日付

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ティッシュの空き箱で作ったプラネタリウムが、真っ暗な部屋に星座を投影する。小さな穴を開けた箱の中に懐中電灯を入れて回すだけの簡単な仕組みだが、それは〈天もなく、地もなく、涯もない〉広漠とした宇宙空間をつくり出す▼小説家干刈あがたさんの短編「プラネタリウム」(樹下の家族収録、福武書店)に、母と2人の兄弟が天上に星の像を映して楽しむ場面がある。暗がりに浮かぶ光の点々が果てしない宇宙空間へと部屋を一変させる。異世界にいざなわれるような美しい描写である▼山梨県の八ケ岳山麓を拠点に、移動式プラネタリウムを持参して病院や福祉施設で上映会を開いている「星つむぎの村」という一般社団法人がある。闘病中で、あるいは重い障害があって外出がかなわない人たちのために、各地に出向いて美しい星空を届けている▼「星を介して人と人をつなぐ」。同法人の理念だという。以前、共同代表を務める高橋真理子さんに取材で活動の様子をお聞きし、その思いに共感した。諏訪市内の病院で開かれた上映会でのことである。満面の笑みで星空を眺めていた患者さんらの顔を思い出す▼同法人が先日、新型コロナウイルスの影響で休校となった子どもたちに向けて、動画投稿サイトでプラネタリウムの映像を配信した。閉塞感に包まれる中、広漠とした宇宙空間に瞬く星々は、子どもたちに癒やしを与えたことだろう。

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